生まれ故郷の西ノ島町で、岩ガキ養殖の漁師を目指すと決めた平木さん。専門学校時代にふるさと島根定住財団の産業体験事業を知りました。「師匠が導いてくれるなら、養殖を早く覚えられるかも」。受入先の漁師、奥板さんと面談し、一層前向きな気持ちになりました。
卒業直後の2021年4月から奥板さんに師事。出荷シーズンなので早朝から船で養殖イカダまで出向くのですが、当初、慣れない平木さんは8時始業。まずは奥板さんらが持ち帰った岩ガキの塊から、なたで1個ずつ貝を引き離します。次に殻表面についたフジツボなどを機械できれいに掃除。「一日中、カキを割ったり磨いたりで、想像以上に大変でした」と平木さん。「力の入れ具合や機械の使い方が悪くてカキが割れたことも。その時は落ち込みましたね」。
1年間の産業体験を経て、現在は研修生。シーズン中の始業時間も早まり、イカダからカキの付いたロープを引き上げる作業も担うようになりました。「怒られることもありますが、聞いたら何でも教えてくれるのでとても勉強になっています。将来は島一番の岩ガキ養殖漁師になりたいと思っています」。
[受入先]
奥板和則さん
自らも兵庫県からのUターンだという受入先の奥板さん。父の跡を継ぐために故郷に戻って約15年、岩ガキ養殖に従事してきました。年を重ね、後継者育成を考え始めた最中に産業体験事業を知り、今回初めて平木さんを受け入れました。「真面目だし、教えたことを少しずつ自分のものにしている」と、“弟子”の成長に目を細めます。当初からフルで働いては体も気持ちもしんどいはず、と産業体験期間中は就業時間や作業内容にも配慮。船に乗せたのは、岩ガキのオフシーズンに行っているヒオウギ貝養殖の作業からでした。「平木君は小さい時から慣れているとはいえ、海の仕事は大変」。イカダから岩ガキの付いたロープを引き上げるには、バランスの悪い丸太の上を乗る必要があり、奥板さんですら落下したこともあるそうです。「絶滅危惧種のような仕事。でも頑張れば、収入が伸びるのも事実。羨まれるような存在になってほしい」。