UIターン者のしまね暮らしにクローズアップ

ON出荷、株管理、販売と早朝からフル回転職住近接で子どもとの時間も確保 Report03南真之さん38歳 兵庫県 >>> 安来市
OFF自然豊かな風景バックに家族とゆったり寛ぎタイム近隣市街地へお出かけも

ONの日スケジュール※イチゴ収穫時期の11~5月

ONの日スケジュール
5:30 「収穫」
ビニールハウスでイチゴの収穫。
7:00 「朝食」
一旦帰宅して食べる。出勤する妻、小学校に登校する長女、長男を見送る。
7:40 「次男の送迎」
2歳の次男を保育園に送っていく。
9:00 「休憩」
こだわりの豆で淹れたコーヒーでブレイクタイム。インスタグラムの更新も。
11:00 「直売所オープン」
セルフ販売が基本。自身はイチゴの株の管理やパック詰めの作業を続ける。必要な時には接客対応も。
13:00 「イチゴの株の管理」
管理しているのは約3000株。一つ一つ葉かきや摘花などを行う。
15:30 「小学生の子どもたちが下校」
直売所で宿題をしたり、一緒におやつを食べたりすることも。
21:00 「就寝」
全員で一旦就寝。
23:00 「再びハウスへ」
株の管理が間に合わない時は夜中に再びハウスで1時間ほど作業する。

OFFの日スケジュール※出荷がない7~10月の土曜、日曜

OFFの日スケジュール
5:30 「苗管理」
つる状に伸びるランナー(子株)をポット苗として収穫時期まで育苗。イチゴの出来を大きく左右する苗育ては、OFFでも気が抜けない。
7:00 「朝食」
一旦自宅に戻って、家族で朝食。天気が良い時にはウッドデッキで食べることも。
8:00 「家事」
掃除、洗濯など。フルタイムで働く妻とはできるだけ家事分担。
10:00 「外出」
家族5人でお買い物。
12:00 「昼食」
宍道湖沿いなどロケーションの良い場所で昼食。小さい子どももいるので、テイクアウトを車内で食べることが多い。
14:00 「店舗オープン、苗管理」
オフシーズンも土日のみ営業。ジャムなどの加工品や雑貨を販売。スイーツも提供する。
19:00 「夕食」
庭でたき火をしたり、バーベキューをしたりすることも。
befor after
befor after

南さんの移住ストーリー

移住前のくらし:早朝出社に深夜帰宅で子どもの顔も見られない日々
 洋服好きが高じて、地元神戸の有名アパレルメーカーに勤めていた南さん。仕事は充実していましたが、お子さんの起床前に出社し、帰宅は時に深夜に及ぶことも。キャリアアップするほど、家族との時間がなくなることに疑問を感じていました。
島根との出会い・決め手:仕事より家族の時間を優先妻の故郷で特産品栽培へ
 アウトドアや自然が好きな南さんは、田園風景が広がる奥様の故郷、安来市に魅力を感じていました。「ここでイチゴでも作ったら?」義母が何気なく放った言葉で、家族との時間を大事にしたい自分の気持ちに改めて気づかされました。
移住のためにしたこと、考えたこと:自治体のパッケージ支援に安心成功した先輩農家の声も後押し
 大阪で開かれた農業イベントで、参加していた安来市のイチゴ農家に話を聞いてイメージをキャッチ。その後、安来市役所を訪れて就農相談し、収益を上げている先輩農家も訪ねました。アパレル業界での経験を生かしたイチゴ栽培ができると確信しました。
今のくらし:家族と過ごせる時間が大幅増センス生かしたショップも好調
 自宅に近く、子どもの通学ルートで、栽培に適した場所にハウスを3棟設置。収穫時期以外は家族と食事ができ、下校時には子どもたちが顔を見せてくれます。1棟のハウスは直売所兼セレクトショップに改装。上質なイチゴとハイセンスな空間が話題に。

南さんが利用した制度:UIターンしまね産業体験

滞在費の助成を受けて技術や知識を学ぶ
島根にUIターンし、農業・林業・漁業・介護・伝統工芸等の産業を体験する場合に、滞在に要する経費の一部を助成する制度。受入先で指導を受けながら知識や技術を身に付けられます。

移住者のREAL

食
義父母の畑を借りて野菜栽培
旬の味を生かしたスープも調理

 神戸時代は、育った環境や仕事の忙しさなどもあって全く料理をしていませんでした。ご飯も炊けなかったくらいです(苦笑)。今は、義父母の畑を借りて野菜を作り、その野菜でスープなども作れるように。新鮮な野菜のおいしさに驚いています。時間に余裕がある時は料理をするようになり、子どもたちに好評なメニューは、ホットサンドです。

住
田園風景を望む一軒家を新築
自然と共に暮らせる寛ぎの空間

 妻の実家で約3年半の同居暮らしを経て、2階建ての家を新築。ハウスや実家、小学校に近くて、暮らしに田園風景を取り入れられるような立地を探していたところ、実家の真横に最適な土地があったんです。山々をバックに、広々とした田んぼを望むLDKにはフルオープンの窓を採用。春は遠景のヤマザクラ、秋は風に揺られる黄金の稲穂など、季節の移り変わりを日常的に感じながらの暮らしは最高です。フローリングは無垢材、壁は漆喰にするなど、内装も天然素材にこだわりました。

子育て
家族と共有する時間が増加
自然豊かな環境で伸び伸びと育つ子どもたち

 アパレルメーカーに勤務していた頃は、子どもが起きる前に出社して深夜に帰宅することもしばしば。仕事優先に生きていくことも価値があるとは思いますが、僕自身は家族との時間をもっと持ちたいと思っていました。起きている時の顔を見られないような日々では、子どもたちが将来大きくなった時、後悔しそうな気がしていました。
 今も繁忙期は忙しく、ハウスに夜遅くまでいることもありますが、家とハウスが近いので、子どもが遊びにきたり、僕がふらっと家に戻って食事を一緒にしたりすることができます。共有できる時間は確実に増えました。
 自然豊かな環境が子どもを情緒豊かに育ててくれています。以前住んでいた小学校の校区は8割の小学生が中学受験するような地域でしたが、僕ら夫妻は子どもを伸び伸びと育てたいと考えていました。今や、川に入ってザリガニを取ったり、畑を走り回ったり、野生児そのもの(笑)。近所のおじいちゃん、おばあちゃんが子どもたちに声を掛け、見守ってくれていることにも助けられています。

就農支援
マンツーマンの「師匠研修」で技術や知識に加え、
“農家”の想いも受け継ぐ

 就農希望者を総合的に支援する「安来市就農パッケージ」を活用。1年目は、ふるさと島根定住財団の「産業体験」を活用し、指導農業士のもとで、マンツーマンの指導を受けました。僕と同時期に研修を受けた同期が2組いて、師匠になる方も3人おられたのですが、市の担当者の方が僕らと師匠の性格などをよくとらえて組み合わせを考えてくれました。研修中は基本9時から17時までの勤務。僕の師匠は、何でもできる人でした。教えてもらった内容もイチゴ栽培に留まらず、溶接や機械のメンテナンスなど多岐に渡りました。僕も師匠に習ったことや他の方々の知恵をお借りして、ビニールハウスは解体から設置まで1人で行いました。全く未知の分野の農業に不安を覚えなかったわけではありませんが、自治体あげての支援システムが整っている上、収益を上げている先輩方のお話も聞けたことで、勇気づけられました。農業知識や技術だけでなく、農家の想いを教えてもらった1年でもありました。すべてを自分でマネジメントできることが“ひとり農業”の魅力の一つ。独立した今は、苗の成長が気になって休みの日もハウスに出入りしますが、全く苦になりません。
 Iターンしてイチゴ農家になると決めた時から、ビニールハウスを活用したショップをデザインすることは念頭にありました。店の名前は「いちごの木△」。動物たちが休んでいる木陰をイメージさせる「木」と、テントを想像させる「△」を名前に入れました。イチゴを介して、お客様がほっとひと息できる空間を作りたいと思っています。採れたてのイチゴやジャムなどの加工品を提供。イチゴ関連のさまざまなグッズやアウトドア商品などの雑貨を置き、グランピングテントなども紹介しています。こだわりが強い人間なので、人を雇って規模を拡大することはないと思いますね(笑)。さまざまな分野のビジネスパートナーとタッグを組みながら、工夫することで収益を上げていくのが僕の夢。やりたいことが次から次へとあふれてくるので、ワクワクしながら毎日を送っています。

実際に暮らしてみて島根はどうですか?しまね暮らしのホンネ

豊かな自然に心落ち着く 子どもたちも伸び伸び遊ぶ

 何といっても豊かな自然です。景色は美しく、排気ガスの臭いがなくて空気がきれい。時間がゆっくりと流れる感じで、心も落ち着きます。
 神戸にいた頃、妻は自転車の前と後ろに子どもたちを座らせて公園まで連れて行っていましたが、今は家の周りすべてが遊び場。用水路でザリガニやドジョウを採ったり、トンボを追いかけたり、花を摘んだり……。遊具がなくても、子どもたちが自分たちで遊びを生み出して楽しんでいるようです。
 隣で暮らす義父母に加え、近所の方々が何気なく見守ってくれていることにも助けられています。子育てには最適な場所ですね。

ここがちょっと

就寝中にムカデに遭遇。虫には要注意!
寝ている時にムカデに遭遇。被害はなかったのですが、虫には油断がならないですね。夜は室内が明るいと、いろんな虫が寄ってきますし。美しい田園風景を優先したので、仕方のない“さだめ”ですね(笑)。