移住後は
農家兼カフェオーナー
ここにしかない魅力、
見つけた!

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2018年春に家族とともに
安来市に移住した池田佳奈さんは、
移住後にイチゴ農家に新規就農し、
さらに農場直営のカフェをオープンした。
モノづくりが好きな池田さんは
自宅の古民家やカフェの一部を
セルフリノベーション!
自分で手がけた空間で、
趣味の藤編みや家族との時間を楽しんでいる。

安来イチゴを食べた瞬間、
一目ぼれ。

のどかな田園風景の中で、鮮やかなウォールアートの建物に目を奪われる。白い外壁に大きく描かれているのは、絵本の世界から飛び出したような真っ赤なイチゴ。「ようこそ!」と明るい声で出迎えてくれたのはイチゴ農家であり、この建物でイチゴカフェ「苺やkirito」を営む池田佳奈さん。店内はふわりとイチゴの甘い香りが漂い、池田さんはオープンキッチンの中で、慣れた手つきでイチゴのドリンクやスイーツをつくる。

安来市は島根県最大のイチゴの産地で、池田さんが暮らす赤江地区はイチゴの栽培が盛んな地域だ。しかし池田さんは移住前、まさか自分がイチゴ農家になるとは夢にも思っていなかったという。「農業はまったくの未経験でしたが、移住前に参加した職業体験でイチゴを食べさせてもらい、これがおいしくて! 感動のあまりイチゴ農家になってしまいました」。2年間の研修を経て独立し、今は安来のイチゴの主力品種「あきひめ」を栽培。週の前半はハウスでイチゴの世話、後半はカフェを営業している。

研修中に池田さんが驚いたのが、姿かたちが規格から外れているために店頭に並ぶことなく処分されるイチゴの多さ。「味はこんなにおいしいのに、もったいない!」と思い付いたのが採れたてイチゴをたっぷりと使ったスイーツの提供だった。さっそく安来市の商工課に相談し、起業者向け助成金を使って自宅の古いトラクター小屋をリフォーム。自分でも床を張ったり、家具を製作したりして、2020年春にカフェがオープンした。「ありがたいことにオープン当初からたくさんのお客さんにきていただいています」と滑り出しは好調のようす。安来イチゴのPRにも一役買っている。

のどかな景色の中、
家族と過ごす日常が幸せの時間。

玄関先でたわわに実をつけるレモンの木は、移住の記念に植えた思い出の木だ。2年間で苗木から大人の背丈を超える高さに成長し、この間に池田さんは第2子となる男の子を出産した。現在長女は5歳、長男は1歳半になる。「仕事も楽しいですが、日々の暮らしの中で一番幸せを感じるのは家族と過ごすひと時」と池田さん。特に自作のウッドデッキで夏場にバーベキューをするのがお気に入りだ。ウッドデッキからは田園風景の先に中国地方最高峰の大山を望み、開放感あふれる景色を家族で独り占め。夏は週の半分がバーベキューになることもあるという。

モノづくりが好きな池田さんはウッドデッキだけでなく、自宅の母屋の一部もご主人と一緒にセルフリノベーションした。移住するとき「せっかく田舎暮らしをするなら古民家に」と2年かけて探し、ようやく出会ったのが現在の家。「修理が必要でしたが、主人の家にも徒歩圏内で条件にぴったり。水回りは安来市の助成を使って業者さんに直してもらいましたが、床や壁は自分たちで張り直しました。創意工夫するのが好きなので楽しかったですよ!」。土壁が落ち、床が抜けそうになっていたところもあった母屋はすっかり綺麗になった。友人家族が泊まりに来たり、小さな子どもたちが走り回ったりしても余裕がある広さ。趣味の藤編みのスペースにしている縁側は、昼間はネコのお昼寝の場所。日向ぼっこをしながら居心地良さそうに大きなアクビをする。庭では飼っているヤギが「メェ~」と鳴きながらのんびりと草を食べ、のどかな空気が流れている。

子どもとゆっくりと過ごす、
当たり前だけど大切な時間。

移住前、池田さん夫婦は大阪で複数の居酒屋を経営していた。ご主人が長男であることや、子育て環境を考えて2016年頃から本格的に移住を検討。「大阪時代は居酒屋が終わる深夜まで長女を保育園に預けていて、一緒に過ごす時間がとても少なかったです。認可外だったので保育料の負担も大きく、何より子どものために生活を変えたいと感じていました」と振り返る。

移住後はご主人も職種が変わり、今は家族みんなで昼間はしっかりと体を動かし、暗くなったら寝て、明るくなったら起きる生活。そんな当たり前の規則正しい生活サイクルを送れることが嬉しいと話す。子どもと過ごす時間が増えて、手先が器用なお姉ちゃんとはよく工作やお絵かきをして一緒に遊ぶ。その中で「細かい作業ができるようになったな」、「デザインや色遣いを考えるようになってきたんだな」と子どもの成長を感じているという。

安来に移住して感じるのは、子育てのしやすさ。「保育園の先生が子どものことをよく見てくれていて、園での様子も教えてくれますし、こちらの話もしっかり聞いてくれます」と安心して預けられると話す。子どもたちは保育園から木の実やテントウムシ、石ころなどを毎日のように持ち帰ってきて、自然への好奇心いっぱいに成長中。保育園のママ友だちや、子育て中の同世代の移住者も多く、気軽に相談できることも子育てしやすいと感じるポイントだ。「子どもにとっても、私にとっても良い環境にいると思います。都会では経験できない、田舎だからこそできることを探してみたいです」

イチゴがきっかけで生まれた
人とのつながり。

赤江地区は伝統的な神事が今も多く残り、地域のつながりが濃い地域だ。二世代、三世代で暮らす家がほとんどで核家族は珍しいそうだが、移住者である池田さんたちを受け入れ、カフェのオープンも喜んでくれている。「近隣のイチゴ農家さんたちがよく気にかけてくださるので、とても助かっています。カフェを開いたことで地域の人たちとコミュニケーションを深めるきっかけになっています」。イチゴきっかけに会話が生まれ、ご近所さんが子どもたちにも気さくに声をかけてくれる。

カフェではイチゴ柄のハンドメイド雑貨も販売し、中には池田さんの作品も。手芸や藤編み、お菓子作りなどのワークショップも毎週のように開催され、池田さんが教えたり、講師を招いたりしている。

「地域にこうした教室が少ないためか、安来、松江を中心に、遠方だと江津からの参加者もいて、毎回来てくださる方もいます」。期待に応えるために、難しい技術を教え、完成までじっくりと付き合い達成感を得られる工夫をしているという。都会と比べてハンドメイドや製菓の専門的な材料が手に入りにくいという悩みはあるが、「自分と同じようにモノづくりが好きな人が集まって、一緒に時間を過ごせることがとても楽しいです」と池田さん。フードロスの問題を解決したいと始めたイチゴカフェ。ここからお客さんや地域の人、同じ趣味を持つ人などさまざまな人のつながりが生まれ、家族とともにのびのびと暮らしている。

池田佳奈さん
池田佳奈さん
大阪府出身。大阪では夫婦で居酒屋を複数店舗経営する。2018年に夫のふるさとの安来市にIターン。自治体の新規就農者支援を活用し、2年間の研修を経てイチゴ農家に。2020年春、「苺やkirito」をオープンする。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。

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