しまね趣味時間演劇

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大好きな演劇でつながるご縁。
この土地で、
演劇とともに生きる。

「演劇が大好き!」幼い頃から演劇とともに
歩んできた外谷美沙子さん。
松江市出身の夫と結婚し、
2018年に出雲市に移住。
日々の暮らしを楽しみつつ、市民劇に参加したり、
自分の劇団を立ち上げたりと、
積極的な演劇活動を行っている。

 雲南市にあるコンサートホールに、凛とした外谷さんの声が響き渡る。舞台の上で戯曲(演劇の脚本・台本)を手に、演劇仲間とセリフの読み合わせをしている最中である。
 「物心ついた頃からずっと演劇に携わってきた」というだけあり、生き生きと楽しそうに舞台を動き回る外谷さん。何度も台本に手を加えながら、妥協のない練習を繰り返していた。
 外谷さんと演劇の出会いは小学生の頃にさかのぼる。出身地である山口県宇部市のおやこ劇場に所属し、芝居を観劇したり、時には役者として参加したり。外谷さんにとってお芝居や舞台は、暮らしの中に当たり前にあるものだったという。

 高校では演劇部に入り、高校演劇の中国大会で雲南市の高校の舞台に魅せられた。「脚本家の亀尾佳宏先生が手掛けた戯曲でした。とてもいい舞台だったので、その後私たちもその戯曲を演らせてもらったんです」と話す外谷さん。それが島根県との最初の「縁」となった。
 翌年には外谷さんの所属する演劇部も中国大会に出場。「その大会でもまた雲南市の高校が亀尾先生の戯曲を上演したんですが、ボロ泣きしてしまうくらいいい作品でした。感激して、出演した生徒さんとメール交換をしたくらいです」とその時の思いを語る。

 高校卒業後は兵庫の大学へ進学したが、そこには期待していたような演劇の環境はなかった。「近くに劇団はなく、大学の演劇サークルなどもなかった。耐えられずに入学3ヵ月目で自分でサークルを立ち上げて、3年間団長をしました」と笑う。
 大学を卒業して一度は故郷の山口に戻ったが、その後間もなく結婚が決まり、2012年に大阪へと移住することに。「結婚して1年くらい演劇から離れたんですが、やっぱりお芝居がしたい!ってなったんです」。演劇への思いが再び湧き上がり、京都で演劇をしていた知人と共に劇団を立ち上げた。そこでは役者ではなく演出家として活動し、3年ほどして解散した後は京都の劇団に所属した。

 夫の故郷である島根県への移住が決まったのは2018年のこと。初めての土地に多少の不安もあったが、「とりあえず市民劇に参加すれば、演劇が好きな人に出会えるだろう」と考えていたという。外谷さんにとっての問題は住む場所がどこなのかではない。そこで演劇ができるかできないか、なのだ。
 調べるうちに高校時代に影響を受けた脚本家、亀尾先生が雲南市民劇を手掛けていることを知った。「島根に行ったら絶対参加しよう!」。高校時代、演劇で生まれた島根との縁が、思いがけずここでつながった。
 雲南市は島根県内でも特に演劇などの文化活動に力を入れている。「演劇とか全然ないところだったら心がくじけていた(笑)」と話す外谷さん、早速参加した創作市民劇では応募者の多さにびっくりしたという。「仕事をしながらお芝居をしている人も多い。演劇に対する情熱を感じられます」とうれしそうに話す。
 市民劇に参加した人を集めたワークショップも開いた。参加者は本番さながらに戯曲を回し読みしていく。年齢も経歴もさまざまだが、演劇という輪を通じて和気あいあいとした時間が流れていった。「島根の人は素直で人懐っこい印象。距離感が近くて移住者を受け入れてくれる」と外谷さんは話す。
 演劇以外では「音訳」のボランティアも行う。音訳とは視覚障害の方のために、書籍などの文字を音声に訳す仕事。「私になにかできることはないかとボランティアを探していた。これなら演劇で培った声が活かせるのではと思ったんです」。舞台上から客席によく通る、聞き取りやすい外谷さんの声。音訳とはまさに適役である。

 現在は出雲市で暮らしている外谷さん。最近ハマっているのはロングスケートボードだといい、休みの日には夫とともに近くの神戸川沿いの堤防へと繰り出す。ボードに乗り、風を切って颯爽と滑るその様子は、舞台の上の外谷さんとは別人のようである。スケートボードの他にも釣りやスノーボードなど、夫婦一緒にでかけて自然を楽しむというアクティブ派だ。
 夫の実家がある松江市八雲町へは大阪時代から訪れていたという。「八雲は自然がいっぱいで、田舎だけどそれがいい。都会は窮屈な箱に詰められているような気分になっちゃう。こっちは空が広いですね」。そう言って空を仰いだ。
 積極的な演劇活動について、外谷さんの夫はどう見ているのか伺うと、「演劇やってないと絞りかすみたいになっちゃうねって言われたことがあります」と笑いながら話す。来年は結婚10年目になるといい、夫婦二人の時間をとても大切にしているようだ。

 2020年の10月、外谷さんは「とや企画」という自分の劇団を立ち上げた。目標は自分で戯曲を書けるようになること。そのために戯曲講座に通ったり、ワークショップに参加しているという。「ゆくゆくは自分の書いた戯曲を使って、自劇団で演劇の公演を継続的に行えるようになりたい」。冷めることない外谷さんの演劇への思いは、島根の演劇文化に新しい風を吹かせてくれそうである。

外谷 美沙子さん
外谷美沙子さん
山口県宇部市出身。2012年に島根出身の夫と結婚して大阪へ移住し、2018年に出雲市へIターンした。2020年には自ら劇団を立ち上げ、脚本の勉強や演劇活動をする傍ら、音訳ボランティアなども行っている。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。

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