家族との理想の暮らしを描き
第2の故郷へIターン
東日本で暮らしていた成瀬翔太さんは、
縁あって松江市にIターンしてきた。
リモートワークができる会社に勤め、
家族との暮らしや趣味とのバランスをとりながら、
心地よい暮らしを楽しんでいる。
充実した日々のお話を伺った。
幼少のころに宮城県仙台市で過ごしていた成瀬翔太さん。祖父母が松江市で暮らしていたため子どもの頃から島根県には馴染みがあった。東北から島根県へ訪れるのには距離があったが、小学校の夏休みに父親が2回、家族みんなを松江市に連れて行ってくれた。その時に、5歳年上の親戚のお兄さんが遊んでくれたことを今も鮮明に覚えている。山でカブトムシをとったり、海で素潜り、宍道湖で釣りなど、夏の定番の遊びを教えてもらったのだ。
「日常でこんなに楽しいことができるって衝撃的で『松江はなんて素晴らしいところなんだろう!』と子ども心に感動したことを覚えています。それに何でもできるお兄さんがとってもカッコ良くて、憧れました!最高の夏休みの思い出です」と成瀬さんは話す。
仙台でも父親と一緒に、休日になると釣りやキャンプに行っていたのだが、宍道湖や日本海の美しさ、自然の雄大さは格別だった。
成瀬さんは独身時代、広島で3年間働いたことがあり、仕事の管轄が中国地方だったことから松江へ出張することもあった。「いつかここに住めたらイイな」と宍道湖を横目で見ながら車を走らせていたという。その頃に広島で奥さんと出会い、結婚。その後、東京の企業に転職した。
「東京で仕事をしていた時に、妻が出産のために一時的に里帰りをしました。妻の実家は、実は松江なのです(笑)。その時に新型コロナウイルスが世の中に広がり、緊急事態宣言も出たため会社が在宅勤務となりました。そこで自分も松江に一緒に行くことにしました。懐かしい松江―。そう、あの夏休みの記憶が蘇ったのです!」と成瀬さんは話す。
数週間だけ松江にいるつもりだったが、釣りやキャンプなど自分のやりたいことができる松江暮らしはとても居心地よく、なんと3カ月も滞在してしまったのだ。すっかり松江暮らしに根が生えてしまい「仕事のためだけに東京で暮らすのか?それとも子育てや今後の生活のことも考えて松江で暮らそうか?」と、一旦東京へ戻るときに決断を強いられている気がしたという。そこで、まずどこで暮らしていても仕事ができるリモートワークの会社に転職することを決め、Zoomに就職した。「結局、家族一緒に松江で暮らしたくて、仕事を変えました」と笑う。
成瀬さんは自宅の1室を仕事場にしてZoomの仕事をしている。またInstagramの「shota_sensei.japanese_teacher」というアカウントで、外国人向けに日本語を教えるコンテンツをアップしている。実は高校の時に1年間、アメリカへ留学に行った経験がある。その時、日本に興味をもっている学生がたくさんいるのに、正しく日本のことを理解されていなかった悔しさがずっと残っていた。そこで外国の人に語学から親しんでもらおうとInstagramで発信をはじめたのだ。今ではフォロワーが15万人に増え、フォロワーに向けたオンラインサロンも開いて、外国人に日本語を教えている。
また、他のアカウントとの差別化を図るためにマンガを取り入れてグレードアップ。「自分の頭の中に構想があるので、それを形にするために模索しながらやっています。自分で制作したいという思いが強いので、苦手なマンガも3年間練習して描けるようになりました。人に頼むより自分で納得するまでやるタイプです」と成瀬さん。コンテンツにマンガを加えることでより分かりやすく、外国の人により楽しんでもらうコンテンツづくりに励んでいる。
松江で暮らして約1年。子どもの頃から好きだった釣りの趣味が復活した。昼はしっかり仕事して、夜は海へ行き釣りを楽しむ。釣り場は何を狙うかによって決めていて、本気釣りは美保関町方面。イカを釣るなら島根町へ。釣り場のポイントも随時調べている。休日は家族と一緒に釣りとキャンプを楽しみ、その後に温泉へ行って帰るのがお決まりとなっている。
「どこでも釣りができるのが島根の魅力ですね。宍道湖ではシーバス、川ではニジマス。でも今は海釣りに行くことが多いです」と話す。海は釣れる確率が高く、何が釣れるかわからないというワクワク感も楽しめるそうだ。
「釣りの魅力は時間を忘れ、自然の中に一体化する感覚になれることです。波の音や鳥の声など自然から聞こえる音も心地いいです。一番釣れて嬉しいのはイカ。特にアオリイカです。島根半島は全国の中でもアオリイカの聖地!最高においしいです!」と興奮気味に話す。
最近は一年を通して楽しめる「サビキ釣り」を知り、ハマっている。小さいエビをたくさんバラまくと、アジが寄ってくる。そのアジをいっぱい釣ったら、釣り針を引っ掛けて泳がせ釣りをするのだ。上手くいけば、そのアジを狙って大物がガブっと食いつくという仕掛けだ。それを待ってる間にバーベキューをしたりキャンプの準備をしたりする。スズキやタイやチヌがよく釣れ、たまにアオリイカが釣れるとワクワク度がマックス!釣れた魚をその場で焼いて食べたり、刺し身で食べることもある。
「海釣りは小物が釣れるし坊主(釣れないこと)が少ないので、精神的にいいですよ。コロナ禍もあって自然の中で家族と過ごすことは人間が本能的に欲しているかもしれないですね」と話す。仕事と趣味と家族との時間を大切にしながら松江暮らしを満喫している。
- 成瀬翔太さん
- 宮城県仙台市出身。幼少期は北海道で過ごして再度仙台市、その後東京都で過ごす。祖父母の出身地、妻の故郷でもある島根県松江市にIターン。現在、Zoomで働きながら、Instagramなどで外国人に向けた日本語講座のコンテンツ制作も行っている。フォロワーも増えファンを得ている。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。