アスリートとして、母として
本当にやりたいことを
やれている喜び。
奥出雲の大自然の懐に抱かれながら、
愛する家族や仲間とともに
熱く・楽しく“いま”を生きる小倉さくらさん。
「四季折々、ここならではの
遊びがいっぱいで大忙し!」と弾ける笑顔。
自分らしい人生を味わい尽くすため、
真剣に身体を鍛え、本気で遊び続ける。
「70歳で、トライアスロンの世界大会で優勝する。これって夢というよりは、今のまま練習してたら普通に出来ると思います(笑)」
サラリとそう語る人が、奥出雲町にいる。小倉さくらさん36歳、3児の母。
しぶとく続けることで培われた体力と身体能力で、冬場のクロスカントリースキーをメインにトレイルランや陸上など複数の競技をこなす。水泳・自転車・マラソンを連続して行うトライアスロンはあくまで身体づくりの一環で、小倉さんにとっては「夏の遊びの一つ」でもある。
クロスカントリースキーとは、斜面を滑り降りるアルペンスキーと違い、平地を進んだり坂を登ったりするウインタースポーツ。カナダやヨーロッパ、特に北欧では幅広い年代に人気の国民的スポーツで、日本でも、積雪の多い地方では親しまれている。
小倉さんが生まれ育った奥出雲町は、島根県内有数の豪雪地帯ゆえスキー人口も多い。温暖化の影響で今ではだいぶ雪が減ったものの、クロスカントリースキーに初挑戦した中学生の頃は「冬は40~50cm積もっているのが普通だった」そうだ。
始めた当時、既に陸上選手として県トップクラスだった小倉さんは、スキーでもめきめき頭角を現した。高校生になると本気度も増し、競技場が多い長野県や新潟県での合宿に参加するなどして、視野を全国に広げるように。さらに強くなりたいと、競技スキー部がある県外の大学へ進学して練習に没頭し、卒業してすぐ島根県へ戻ってからも鍛錬を続けた。クロスカントリースキーは全身を使う持久力系の競技なので、日々のトレーニングが欠かせないのだ。
「全身バランス良く鍛えるためにいろんなスポーツをします。今は子育て中で、まだ子どもが小さいので、レジャーとしてみんなで気軽に楽しめる運動を積極的に取り入れています。サイクリングは登場回数が多いですね。実は、しょっちゅう家族でサイクリングしていたら小6の息子が自転車にハマってしまい、将来は競輪選手になりたいそうで、私のスポーツ好きをしっかり受け継いでくれています!他にも、ローラースキーやノルディックウオーキング、比婆山でトレイルラン。ボートや陸上。夏はさくらおろち湖でカヤックやサップ。秋は吾妻山や船通山で登山して、冬はスキー!トレーニングでもあり四季折々の遊びですが(笑)、奥出雲なら全部できちゃうんです。しかもどこへ行っても人が少ないので、自然という“練習場”を貸し切りにしやすいし、空気も良い。…恵まれているなあと思います」
恵まれていると言うものの、一般的には島根県のスキー選手は不利だ。なぜなら、北海道や東北、長野や新潟などの“本場”に比べたら雪が少なく、練習用コースも少ないから。だが逆に「そこが良いんです!」と力説する。
「地元の自然環境を活かしてトレーニングを工夫する。独自のやり方で鍛えて、国体で強豪県の選手たちと勝負する。これがとても面白い!実は私は、他県や他の競技の人から応援してもらえることが多いんですよ。練習のしづらさをカバーして前向きに頑張ってるね!ということで応援したくなるみたい(笑)。あと、何事も本気でやっていると本気の人が集まってくるんだと実感しています。サポートしてくれる夫を含め、いろんな分野の仲間と支え合うからこそ挑戦し続けられる。この環境で本当に良かった」
頑張り屋の気質は昔から変わらない。しかし、島根で暮らしながら年齢と経験を重ねるうちに、頑張り方が変わったそうだ。
「昔は大会で入賞したくて鍛えていたんです。でも今は賞なんてどうでもよくて、何より大事にしたいのは自分スタイルでやりたいようにやること。若い頃、成績は良くても心を置いてけぼりにしている選手をたくさん見てきました。特に女性はストイックにやりがち。でもそれじゃ楽しくない。私は、田舎暮らしも子育ても、友達付き合いも趣味も全部楽しみたいし、“いま”を大切に、たとえ明日死んでも後悔しないようにしたい。そして日々感じる幸せを家族や周りの人たちと共有しながら生きていきたい。この想いが私の軸になりました」
幸せはみんなでシェア。自宅の庭でわいわいキャンプするのは日常茶飯事で、小学生親子を集めてスポーツイベントを催したり、陸上指導や練習会、公民館でノルディックウオーキング体験会を開くなど、とにかくアクティブに「多くの人を巻き添えにして楽しんでいます(笑)」。
中でもサイクリングは、家族と一緒にリフレッシュできる大切な時間だ。小学6年生の息子と出雲大社まで50kmほどツーリング。小学3年生の息子とは近所のスーパーまで自転車でおやつを買いに。2歳の子はサイクルトレーラー(自転車に繋ぐ貨物車)で牽引して一緒にサイクリング気分。ご主人がランニングでついてくることもあり、自転車は気軽な週末レジャーとして欠かせなくなっている。
「ここは車も少なく綺麗な道路が多いので、快適にスイスイ乗れちゃう。どこまでも行けるような気分になれて興奮します!最近はサイクリストが増えたので、すれ違う時の挨拶も楽しみの一つになりました。いつか息子たちと一緒に『さくらおろち湖サイクルロードレース』に出て勝負したい!負けても嬉しいし、勝っても嬉しいな(笑)。島根県横断の旅もいいですね。奥出雲町を出発して、すべての市町村を回りたいです」
やりたいことは尽きないが、一日一日を精一杯生ききることを大切にしている。
ふるさと奥出雲にしっかりと根を張り、目標に本気で向き合いながら、あくまでも自然体。自分を大切にするそんな生き方が、小倉さんをさらに強く美しく輝かせていくに違いない。
- 小倉さくらさん
- 島根県奥出雲町出身。大学卒業後すぐ兵庫県から島根県へUターン。現在(2021年9月)は奥出雲町の実家で暮らし、義務教育学校玉湯学園で特別支援教育支援員として働きながら様々なスポーツやレジャーを存分に楽しむ。3人の息子(小6、小3、2歳)の子育てにも奮闘中。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。